2012年3月18日日曜日

女は赤で

2年半前の夏。私は札幌にいた。
以前勤めていた会社の仕事で10日間くらい滞在していた。

その間に2回訪れたお店がある。
日下公司」という革製品のお店。

店舗の中に公房があり
作業をされている姿が見える。

ご夫婦で製品を作られているその姿に
商品に対する姿勢が見えて
きちんと使いこなしたい、という思いが生まれる場所だ。

そのとき、私はティッシュケースを探していた。
でも、探しているものほど
お気に入りって見つからなくて
根気よく探し続けていた。

「日下公司」で見つけた革のティッシュケース。
これだ!と一目惚れしたのだけど
残念ながら赤色はなかった。

ある少年が私に言った印象的なセリフがある。

「男は黒だ、ってパパが言ったから」

何の話をしていたのかは忘れたけど
何かの色を選ぶときに
「なんで黒なの?」とでも聞いたんだと思う。

なんだかすごく説得力があって
「じゃぁ、女は赤か」と、それ以来
身の回りの小物を赤色で揃えはじめた。

いまや、キーケースもペンケースも
iPhoneカバーも名刺入れも赤色である。
名刺の文字も赤色にした。

日下さんにお聞きしたら
ティッシュケースは
そのときにある、革のハギレを使って作られているとのことで
次に何色で作るかはわからない、とのことだった。

「赤が欲しいんです!」とアピールしたところで
ないものはないので
「○日後まで札幌にいるので、その間にまた見にきてみます…」と
後ろ髪をひかれながら店を去った。
多分、5日後とか、
1週間なかった気がする。

札幌を去る日が近づいてきた2日前くらい。
ふと空き時間ができたので、日下さんのお店に寄ってみた。

扉を開けると日下さんご夫婦は
「いらっしゃいませ」とだけ言って
作業に戻られた。

どうかな…と思いながら
ティッシュケースの売り場を見たら
赤い色のティッシュケースが置いてあった。
「あ!」と思わず声を出した私に
にやりと笑った(ような気がした)お二人がいた。

「来られるかなぁと思って」

その出来事から2年半。
いま携わっているテレビ番組のゲストに
日下さんをお呼びしていると知った時
それはそれはドキドキした。

日下さんがその時のことを覚えていなくても
あのとき、
ものすごく嬉しかった気持ちだけはお伝えしようと思った。

2年半使い込んだティッシュケースを出して
お話をしたら、
「いい艶が出ましたね〜」と微笑んでくださった。

札幌で出会った忘れられなかった思い出が
よみがえり、
またこれからも続いていくんだと思った。

そして、今
次に札幌を去るときまでに手に入れたい
日下さんの製品がある。



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