2012年6月29日金曜日

女知床一人旅 その3

霧という悪天候で
知床岬へのクルージングが出来なかった私。

午後からのスケジュールを考えると
下手に動くこともできず
だからといって、何もしないのは
旅人魂がウズウズしちゃうので
急遽、岬までは行けないけど
知床を少し感じられる
時間が短いクルージングに参加することにした。

キムは今から知床五湖に行く、と決めたようで
「よい旅を」と握手をして別れた。

クルーズまでの待ち時間
防寒対策にと持っている全ての防寒着を着込み
そして腹ごしらえにと
知床産スケソウダラのフィッシュバーガーを食べた。
これが像像以上に大きい。

北海道の魚の大きさにはだいぶ慣れたつもりだったけど
バーガーから自己主張激しく飛び出る
お魚さんにはやっぱり驚く。

お味は
スタッフのお姉さんが「自信作です!!」と鼻息荒くおススメしてくれたとおり
肉厚で、美味しくて
これは朝から食べ過ぎたな、と自分に突っ込んでおいた。

いざ、クルージングが始まると
寒くて寒くて震えながら
それでも、知床をの景色を見逃さないぞ、という
気合い満々で望んだ。

知床に関しては、ナレーションを書くために結構調べたから
少しだけ知識があった。
…とはいえ、仕事が終わると忘れてしまう程度の知識。

それでも、実際にナレーションを書くために調べた地形や
滝を目の前にすると、うっすらと記憶が蘇る。

やはり、映像で見るのと直に見るのとでは全く違う。
切り立つ岩のゴツゴツした荒さまでは
わからなかった。
下手に近づくと傷つけられそうな感じ。

印象的なのは滝の名前だ。
「男の涙」や「乙女の涙」といったもの。

「乙女の涙」のちょうど背面にあるのが「男の涙」という滝。

男は背中で泣くのだそうだ。

そのわりには結構な水量で
背中で大泣き、というなんとも
現代の男の子特有の感じに笑ってしまったのだった。


2012年6月26日火曜日

女知床一人旅 その2

あらかじめ申し込んでいた
知床岬へのクルージングまでの時間を
バスのターミナルで過ごしていたら
何度かバスの時刻を確かめにきた人がいた。

彼の名前はキム。
横浜在住のコリアンだった。

ベンチの隣に座った彼と
久々に話す英語に戸惑いながら
どこから来たか、とか
今日をどう過ごすか、とか
この先どこを旅するか、といった
旅人同士の会話をした。

その瞬間、外国にいるみたいで
昔、1人で海外を回っていた頃を思い出した。

「知床岬のクルージングを申し込んでいるんだ」
と言う私に
彼が放った言葉は破壊力を持っていた。

「多分、それ出来ないよ。だって、霧がすごいんだから。
僕もさっき出来ない、って言われたんだ」

「そんなことないでしょ、だって天気予報は晴れだよ」
私は彼に答えながら
さっき歩いたときに気になった霧の存在を思い出した。

電話でクルージング会社に確認したら
案の定「霧のため船は出れないかもしれない。
でも、出る可能性もあるからひとまずオフィスに来て」とのこと。
もし、船が出るなら僕もそれに乗る、と言う
キムと一緒にオフィスに向かった。

出るよね、船出るよね?と頻りに言う私に
苦笑いのキムと向かった先で出ていた結論は
「霧のためクルージングは中止」ということだった。

深夜バスで知床に到着し
朝からクルージング、という
私のプランニングは完璧だったはずなのに
早速くるってしまった。

その私に追い打ちをかけたクルーズ会社の人の一言。

「天気予報、滅多に当たらないんですよ〜。
たまに当たったら、あぁ今日は当たったね、って感じですよぉ」

そうか。
北海道は外国だった。

私とキムはとりあえず、
オフィス併設のカフェでなんとなく時間を過ごすことにした。

2012年6月25日月曜日

女知床一人旅 その1

北海道を去る前に
どこかに1人で旅に出ようと思った。

旅が好きで
有り難いことに仕事も旅に絡んだものが多い私。

でも
昔から海外ばかりに目がいって
日本を旅する、ということをあまりしていなかった。

北海道も今回の仕事がなければ
こんなに長期で滞在することもなかっただろう、と思う。

選んだ場所は知床。

「死ぬ前に一度行ってみたい」と父アキラが言っていたので
本当は一緒に行けたらよかったのだけど
急に決めたのでやはり1人で。
彼には「下見してくるよ」とだけ告げておいた。

「知床には一度行ってみたい」と私も思っていた。

2年くらい前に
日本の美しい景色を集めた販売用DVDの
ナレーションを書かせてもらったことがある。
日本全国の色々な場所を書かせてもらったのだけど
中でも印象に残っていたのが
知床だった。
特に流氷の映像は
想像以上の世界が広がっていたので
一度、自分の目で見てみたいと思った。

流氷の時期でないのは残念だけど
今の季節には今の良さが必ずあるはず、と出かけた。

札幌から深夜バスで約7時間。

酔っぱらってバスに乗車したので
乗車と同時に眠りにつき
睡眠時間はバッチリ。

確認した天気予報は晴れだった。

きっと素敵な旅になるにちがいない、と
ワクワクしながらウトロの町に降り立った。

朝6時半。
町は眠っていた。

聞こえたのは水の音。
見えたのは海と数羽のかもめと
セイコーマートの灯り。
想像していた通り、風が冷たい。

少し歩いてみたけれど
あいている場所はどこもなかったので
セイコーマートで温かいお茶を買って
バスのターミナルで
町が動き出すのを待つことにした。

ただ一つ。
気になったのは
町に降り立った頃より増えている霧。

大丈夫。
天気予報は晴れだったんだから。

2012年6月21日木曜日

ハンサムな女

「あれ? そんな顔だった? プチ整形?」

東京に戻って
久々に会った人からプチ整形疑惑が持ち上がった。

「札幌とか言って
本当は韓国経由だったんじゃないのぉ??」

その反応は

関西人気質の私としては
かなりおいしくて

あらゆる場所でネタに使っているのだが
実際のところ
プチ整形はしていないので
なんか変わった原因はメイクだろうと思う。

女の人は本当に
メイクで印象が大きく変わる。

北海道でファッション関連の番組に
携わらせてもらっていた時に、間近でその事実を見続けた。

私も普段メイクをするけれどいたってナチュラル。
というか、そんなにしない。

メイクをするようになって約15年。
何度かは自分に似合うメイクの研究を試みたこともあるが
なかなかうまく終着しなかったため
まぁ、こんなもんでいいだろう
みたいな取り組みだった。

そんな私のメイク魂に火を灯した女性がいる。

その北海道の番組で
番組レポーターである素人の女の子達の
ヘアメイクを担当してくれていた女性、あいちゃんだ。

一番最初に会ったときの彼女は
黒いキャップを被っていたけど
その下に見える力強い目元と凛とした表情が印象的だった。

しかも、私よりも5歳程年下の彼女は
色々な意味で私よりもはるかにしっかりしていた。

格好いい女性。
そう思った。


その後、番組でメイク特集を組んだ時
彼女が番組ゲストとして出演してくれることになった。

彼女は「女性はみんな輝ける。
女性がキラキラ輝く、そのための一歩にメイクを使ってはどうでしょう?」
というような提唱をしていて
メイクレッスンや、お出かけ前のメイクを施してくれる
メイクアップサロンなども経営している。

メイクで綺麗に身支度を整えることがゴールではなく
明るく生きていく手段や通過点の1個がメイクであるという考え。

その考え方が素敵だし
彼女は本当に魅力的な人だな、と思った。

そして、こういう話を彼女の口からしてもらったら
女の子はメイクの捉え方を変えるかもしれないし
彼女を掘り下げることで
この先、何がしたいかわからないと思っている
女の子達の何かの1歩になるかもしれない、と思った。

だから、メイク特集といいながら
メイクのHow toだけに収めず
彼女がなぜ
メイクというものを使って仕事をするようになったのか?
というような話までしてもらう構成にした。

私は構成を書く時
私の師匠だと思っている方の話を思い出していた。

「なぜその物事を始めたか。というきっかけが大事。
それさえ忘れなければ、ずっと続けていく原動力になる」

彼女のきっかけを聞くことで
彼女自身の人生が見えて、
それが誰かの何かのきっかけになったり
きっかけを思い出す一つになるはず…

北海道ローカルだから、ということもあるのだろうけど
メイクだけでなくあいちゃん自身を掘り下げていく構成は
そのまま、採用されることになった。

収録現場で
私は話す彼女の目の前にいながら
私自身の子供の頃のことを思い出していた。

彼女は、自分の顔や体が好きじゃなかったのだそうだ。
そのコンプレックスをパワーとして
自分の顔をいじったりするようになり、
そこから、メイクやおしゃれが好きになって
今があるらしい。

私も自分の顔が好きではなかった。
今でもそんなに好きじゃない。

憧れのパッチリ二重でもなく
ただただ、印象の薄い顔だなぁ、と子供の頃から思っていた。

でも、眉毛だけは父親譲りの立派な眉毛で
「凛々しい綺麗な眉毛ね」と誰かに褒められる度に眉毛を抜き、
「睫毛が長くていいね」と言われると睫毛を抜いた。

顔が嫌いだから
褒められることで顔を見られるのが嫌で
褒められる要素をなくそうとしていた。

昔程のコンプレックスはいつからか消えたけど
それでも
完全に抜けたかというとそうでもないと思う。

まさか、メイクで
自分の顔を好きになれるかも、なんて考えたこともなかった。
30も半ばになってその事実に気づくなんて衝撃だ。
誰かの何かの気づきになれば…なんて思っていたのに
自分自身が何かに気づいてしまった。

彼女のおかげで
色々な意味でメイク特集の回は私にとって
すごく印象深い回となり
もう少し、女である自分を見直して
自分の顔も好きになり
自信を持った生き方をしてみたい、と思った。

そのきっかけの一端をメイクに担ってもらうことも
それはそれで、女性に与えられた特権かもしれない。

今より15kgくらい太っていた頃に
トミコに言われた言葉を思い出した。

「あんたは、ある程度の年齢を重ねてしまったから
内面は今更そんなに変えられないけど
外面はいくらでも変えられるんだから、とりあえず痩せて外面を綺麗に磨きなさい。
そんなんじゃ寄るものも寄り付かない」

確かに外面は心がけ次第で変えられるのだ。
その時は外見全体を指していたけど
顔だってそうだ。
自信がないと自信がない表情をしてしまうのだろう。
メイクをきっかけに表情だって変えられるだろう。

そんな気づきをくれたあいちゃんに感謝をしつつ
私は今日もメイクをする。

2012年6月16日土曜日

かもめになりたい

昔、スコットランド人のバジルという友達に
「生まれ変わったら何になりたい?」と聞かれて
「鳥になりたい」と答えたことがある。

なんでも理由が知りたいバジルは
その後「なんで? 何鳥?」と私を質問攻めにした。

なんでかは「空を飛びたいから」だけど
何鳥になりたいかなんて
特に考えたことなかった。

でも、そう答えたらきっとまた質問の嵐が始まるから
そっとしておいてほしかった私は
「かもめ」と答えた。

そうしたら
「トシコはカラスが嫌いだと言っていたのに
鳥になりたいのはおかしい」と言い出した。

確かにカラスが大嫌いだ、とバジルに言ったことがある。
特に都会のカラスが嫌い。

下手したら襲いかかってくる。
昼休みに公園でご飯を食べていたら
カラスが頭に止まって、お惣菜を盗まれたこととか
食肉市場から肉をついばんでほこらしげに
飛び立った、あの目とか
忘れられない。

でも、カラスは嫌いでも
かもめは嫌いじゃない。

鳥全部が嫌いなんて言ったことない。

話がどう決着したかは覚えてないのだけど
なんでも感覚で答えると
こうして矛盾を生むのかしら…
と当時、思ったはずだ。

海育ちの私は
昔からかもめをよく見ていた気がする。

だからなのか
かもめを見るといつも少しだけ心が躍る。

北海道でも
かもめをよく見た。
小樽、稚内、知床…
かもめを見ると必ずシャッターを押してしまう。

何も遮るもののない空を飛ぶ彼らを見ると
私もどこまでも飛んで行けるんじゃないか
という気にさせられる。

森を飛ぶ鳥達よりも自由に見える。

だから
かもめになりたいと思ったのだろう。

そんな私。

今、生まれ変わったら何になりたいかと問われたら
違う答えを用意している。

来世でなるには
現世で何をすればいいんだろう。

2012年6月14日木曜日

創成川を散歩

 「どこに住んでいるんですか?」

何度か札幌滞在中に聞かれた。

「札幌駅を背中にして、
創成川をもう少し超えたところです」

一人で街を歩く時に
私の目印になっていたのが
テレビ塔とこの創成川だ。

創成川は札幌市を東西に画する起点なんだそうだ。

言っちゃ悪いけど
そんなに特別綺麗な訳ではない。

でも、なんとなく
この川が好きで
一人で歩きながら
写真を撮ったり
上から川をただ眺めたり
無意味に川沿いを歩いたりしていた。

私は実家が神戸なので
山も海も馴染みがあるけど
川は馴染みがない。
神戸で川沿いを歩いたことってない気がする。

大阪から友達が来た時
二人でこの創成川沿いを歩いた。

「なんか好きなんよ、この川」と言ったら
「うん。なんかわかる」と友達は応えた。

なんで好きなのかはわからない。

私は、物事に理由が必ずしもないといけないとは
思っていなくて
「なんとなく」も理由の一個としてあげていいと思っている。
…仕事のときはそんなこと言ったらダメなのだろうけど。

好きなものに共通している理由から考えると
創成川は
自分が立っている場所から
その先に続いていく感じが
目に見えているから、
好きなのかもしれない。

なんて、
頑張って理由を考えてみたけど
まぁ、たぶん
なんか好きなだけなんだろうな。

創成川とテレビ塔のコラボは
私の中ではテッパンです。





2012年6月13日水曜日

ザ・札幌観光

札幌滞在中の
ある2日間。
大学時代の友達が札幌に遊びに来た。

彼女に「どこに行きたい?」と訊ねたら
北海道自体がはじめてだから
ものすごくベタな札幌観光がしたい、と言った。

彼女の希望を聞いて
羊ヶ丘展望台からスタートした。

札幌に住む方には、
特に何もないよ…と言われていたので
行ったことなかった場所。

行ってみたら
目の前に広がる街々と
光る札幌ドーム
全身のクラーク博士像に
牧歌的な羊達。

ものすごくあるじゃない!と感動するミドサー女子二人。
でも、他にもテンションあがっている
元気な観光客が山ほどいたので
目立たなかった。

クラーク博士のあのポーズは
遥か彼方にある永遠の真理を差しているのだそう。

吹き抜ける風が心地よくて
ただ、芝生を歩いてみた。

緑に染まってきた白樺の木も素敵だし
こんな空間、なかなかないと思う。

きっと北海道の人は見慣れすぎたんじゃないだろうか。
これだけ、自然に囲まれる場所って
都会にいるとそれだけでテンションがあがるものだ。

その後
行く場所、行く場所
なんで私、滞在中に来てなかったんだろう?という場所の連続だった。

友達曰く
「雪に覆われてたからやろ?」

そうだ。
そうだった。
そんなことすらすっかり抜けていた。

来たときに真っ白に覆われてふわふわしていた街は
緑と光が透ける固い街になっていた。

その街を
もう17年の付き合いになる友達と
この数ヶ月に考えた地方性の話やら
先の話やら
人間性の話なんかをしながら
歩きまくった。

最後に彼女が一言。
「としちゃん、
今度もし誰かと北海道を旅することがあったら
時々休憩入れた方がいいよ」

自分が数ヶ月暮らした街を
長年の付き合いの友達と歩くことが嬉しくて
歩かせすぎたみたいだ。

2012年6月7日木曜日

再び、北海道。そして、帰京。

一度、東京に戻り
再び北海道に行き、2週間程滞在して
そして6月の今は東京の自宅にいる。

北海道での仕事が終わったら
ブログも更新しないままに
札幌での引っ越し作業に追われた。
今年は既に何回、荷造りしてるんだろう。
引っ越しもしたから結構な数だ。

いつだって去り際はバタバタする。
今回も同じく。

たった3ヶ月。
されど3ヶ月。
その間に増えた荷物は
全くもって片づかなかった。

捨てるつもりで持っていった
鍋やら
壊れた体重計やら
ボロボロのブーツやら
荒ゴミをどうやって捨てていいのやら…
と悩んだりしながら
荷物をまとめて
お世話になったマンスリーマンションを退出した。

東京に戻って3日。

札幌から送り出した荷物を受け取り
部屋もだいぶ片付いた…と言いたいところだけど
まだ片付かない。

そうしていても
仕事の打ち合わせに出かけたり
久々に会う人と飲みに行ったり、と
東京の日常にとけ込み始めている。

そんなもんだと思う。

知人と飲んでいたときに
「北海道ブログ、どう終結させるの?」と聞かれた。

どうしよっかなぁ。

まだ、北海道のことで書きかけの記事もあるし
思い出しながらでも
もう少しだけ更新しようかな、というのが今の気持ち。

久々の東京でも何か思うだろうし。

まぁ、まだ New Daysは続いている、ということで。
Tomorrow is another dayだし。
毎日違う空だから。