2012年5月20日日曜日

東京の空の下オムレツのにおいは流れる

急ぎの仕事が
少し落ち着いたある日。

携帯のタイマーをオフにして
ただ、時間に流されるままに
眠り続けていた。


ふと、目覚めたときに
昨夜降り出した雨があがり
晴れていることに気付いた。


さて。一日中部屋のベッドの上で過ごすか
どうしたものかと考えたとき
ランチにオムレツを食べに行くことを思いついた。


昨日から無性にオムレツが食べたかった


理由は単純。


しばらくぶりに
石井好子さんの「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」のページを開いたら
あまりの美味しそうで幸せな描写に
頭の中がオムレツで一杯になったからだ。


思い立ったが5分後。
ノーメイクで着っぱなしのワンピースに
サンダルを引っ掛けて出かけた。

お目当ては
東京に帰ってきてから、ほぼ毎日通っている
大好きなパン屋さんの併設カフェのオムレツランチ。


そう広くない店内は
13時半を過ぎてもほぼ満員。

メニューを渡されてから聞かれるまでに
5分以上の時が流れた。

忙しそうな様子は丸見えだったので
本を読みながら気長に待つことにした。

通された席のお隣のカップルが
男性はドレッドヘアの黒人
女性がスキンヘッドの日本人で
聞こえてくる会話が英語なもんで
ここはどこだろう、と
自分の居場所がわからなくなった、そのとき。


外国の方特有の
目があったときに
微笑む合図が私にやってきた。


家から五分のカフェが
完全にニューヨークになった瞬間だった。

ぼんやりと
ニューヨークを思いながら
プレーンオムレツを頬張り
達成感で満々になっていた私に
短い英語が響いた。

黒人男性が「美味しい?」と聞いていた。

「とっても!」と答えたら
「それはよかったね」と再度微笑まれた。

「来週末、よかったら僕らと一緒にここでランチしない?」と誘われたけれど
来週末は札幌にいるな、と思い
断った。

その後、
お二人の出会いはニューヨークだったこと
日本に住んで26年になること
危険な香りのニューヨークが好きだったからもう帰ろうとは思ってないこと
など色々話をしてくれた。

最後にお互い名前だけを交換して
また会いましょう、と別れた。

会うかどうかは縁とタイミング次第。

それでも私は
六月の週末にこのカフェに座っているかもしれないし
座っていないかもしれない。

2012年5月14日月曜日

TOKYO

先週末、東京に戻った。
来週には、再度
北海道に行くけれど一時帰京。

東京に着いて驚いたのは
ノースリーブの人がいたことと
サンダルの人がいたことだろうか。

家に帰って私が、真っ先にしたことは
黒いタイツを脱ぐことだった。

札幌へ行く前に
引っ越したばかりの私のマンションの部屋は
思っていたよりも片づいていなくて
落ち着かない。

電気代の催促状が山のように届いていて
慌てて払いに行く。

合間合間に
仕事のメールが入り
なかなか心が休まらない。

マンションの管理人さんにも挨拶に行かなくてはと
お宅訪問をしたら
インターホン越しに女将さんが
「今、番台にいます」と言った。

引っ越したばかりのこのマンション、
なんとお部屋にお風呂がない。

その代わり、マンションの1階が銭湯なのだ。
ここの住人は家賃の支払いと引き換えに
銭湯チケットをもらい
毎日無料でお風呂に入ることが出来る。

女将さんに会うために
銭湯の番台へ伺うと
背筋をピンと張ったおしとやかな彼女が
いつものように上品な笑顔で迎えてくれた。

「まぁ、長い間大変でしたね。おかえりなさい。
お疲れが出ないように、お風呂で温まってくださいね」

単純な私。

この言葉に
あぁ、今のマンションに引っ越してきて良かった、と思った。

東京という場所に暮らしながら
このマンションは人の暖かさが感じられる珍しい場所だと思う。

前にこの部屋に住んでいたのは私のお友達。

札幌に行っている間に
前に住んでいた部屋の更新などがあり、
無駄なお金を払うくらいなら引っ越したい…と言ったら
自分はもう引っ越すのだけど…と今のマンションを紹介してくれた。

35歳にもなって
部屋にお風呂がない生活はどうしたものか、と悩んだのだけど
ネタにもなりそうだし、とりあえず引っ越してみた。

引っ越しをして
すぐに札幌に行ったので
住み心地も何もわからない状態だったけど
女将さんと話をする度に
彼女のあまりの凛とした立ち振る舞いなどの
素敵な女性っぷりに
この人に会えたというだけで
こに住む価値はあったんだな、と思った。

色々な用事が一段落してお風呂に行ったら
貸し切り状態だった。

貸し切り風呂で
3ヶ月分の疲れを洗い流した気分の私は
札幌で出来たお友達とメールのやり取りをしながらも
その後、強烈な眠気に襲われて
ふと気付いたら眠りに落ちていた。

東京1週間のはじまりだった。



2012年5月9日水曜日

締めくくりの街

日本最北端の地、稚内にいる。
まさか、こんな遠くまで来ることになるとは思ってもみなかった。

海の向こうはロシア。
街ではロシア語の看板も見かけた。

来る前にどんな雰囲気なのか
全く想像がついていなかった最北の地は
とにかく寒い。

せっかく札幌で春を迎えたのに
こちらは桜の開花もまだの様子。

一度はずしたのに
モッズコートの裏地に毛を装着して
もう着ないと思っていたのに、再びニットに袖をとおした。

それでも、
この北の地で出会う人々の暖かさや
とってもチャーミングな笑顔や
吹きつける冷たい風も吹き飛ぶくらいの絶景などに完全に心を奪われた。

そんな二日間。
最終日の夜の締めくくりに
一軒のラウンジを訪れた。

そこには、アイロンがきっちりとかけられた白いシャツに
蝶ネクタイ、黒いベストを着たマスターがいた。

ゆるやかに時が流れているような空間で
マスターがふる
シェイカーの音がリズムを刻む。

出されるカクテルは全て美味しい。

贅沢な時間に
完全なるご機嫌さんになった私。

最後のお酒を頼んだ時に
マスターが作ってくれたカクテルは
白いすっきりとした色で
「ダスヴィダーニア」という名前だった。

ロシア語で
「さようなら。また会いましょう」
という意味だとマスターが微笑んだ。

明日、札幌に戻り
明後日、東京に戻る。

10日後に再び
仕事で札幌に戻るとは言え
一度、海を渡る。

約3ヶ月の北海道の生活が
ひとまず終わりを告げようとしているのだなぁと実感した。

2012年5月7日月曜日

相変わらずな私たち

土曜日から来ていた両親が帰った。

久々に会うと、相変わらずの2人に
自分も相変わらずなことを気付かされる。

相変わらず、って
あんまりいい言葉な気がしていなくて
なんとか相変わらずじゃないようにしなくては、
と躍起になって変化を求めた時期がある。

でも、ある頃。
それでいいのではないかな、と思った。

無理に求める必要はなくて
何かを必要とした時に自然に変わったり
変わらないことが必要なこともある。

そうやって生きていった方が
肩の力が抜けて
いきやすい。

写真は父親が
えらく感動した雪山と桜の同居。
北海道の人にとって
桜と雪の同居は珍しくないかもしれない。
それでも、私たちにとっては珍しい。
変わらないことが変化になることもある。

そして今日から3日間、稚内へロケハン&シナハンへ。

あるきっかけで生まれたお仕事の下準備。
変化は求めなくても自然に起こるもの。

その後、少し東京へ。
東京の友達に、もうすぐ帰ると連絡したら
「こっちは何も変わってないから安心して…」
と言われた。


2012年5月1日火曜日

擬人化の法則

SMILE DAYS 第3話 が先週から公開された。

第3話制作中にスタッフ間で話題にあがったのが
冒頭とエンドで熱演を見せる「さくらじまん」くんの存在。

何か鹿児島独自のゆるきゃら人形が
北海道に送られてきたら面白いなぁ、と
思って調べていたら出てきたのが
西郷隆盛の意思を背負った鹿児島PRキャラクターの「さくらじまん」だった。

あらすじを組み立てた時点で
「カイくんのお母さんはきっと君付けをするだろう」と妄想し
提出物に「さくらじまんくん」と君付けで書いていたため
ほとんどの制作陣は
「さくらじまんくん」という正式名称のキャラクターだと思っていたらしい。

揚げ句の果てには
私によって「じまんくん」と愛情をもって略されていたが
これだと、全くの別人だ。

この「君付け」。

ものを擬人化するというのは
関西人の特徴なのかも知れない。

関西のおばちゃんが必ず持ち歩く、という
「飴ちゃん」
(私もいつも持ち歩いている)

飴は「ちゃん」をつけるものだ。

でも、札幌で「飴ちゃん」と言ったら
みんなが「本当にちゃんづけなんだ…」と
いう目でみていた。

たぶん、小さいものや
愛着があるものに「ちゃん」や「さん」付けるのだと思うけど
その後、気になって
他に何かあったかしら、と探し続けている。
子供の頃から擬人化に馴染みすぎて
特別視して探すと見つけられない…

「おいもさん」「おあげさん」「おかいさん(お粥さん)」

あるレストランで食事をしていた時に
あまりに美味しかったのと
ワインを飲んで気分が良かったので
「今日はご機嫌さんやわぁ!」
と言ったら
謙太郎さんと店員さんがきょとんとしていた。

「え?…ご機嫌さん?」
「あれ?言わへんの?」

気分が良くなるとついつい使う「ご機嫌さん」を
関西の人だけが使っていたなんて35年目の真実。
だって、トータス松本も歌ってるやん。
関西人やけど。

ものにつける「さん」とは違うけど
喜びマックス表現は誰がなんといおうと「ご機嫌さん」だ。
朝の挨拶に言う「おはようさん」も関西だけのものなのかなぁ。

カイくんのお母さんがご機嫌さんに送ってくる
さくらじまんくんはとっても癒される。

SMILE DAYS 第3話
http://www.nhk.or.jp/sapporo/smile/movie/03/index.html



食いしん坊 極上ランチ たかはし料理店。


何度か足を運んだ
北海道庁の一番上の階にある食堂「たかはし料理店。

ここはかなりのお気に入り店だ。
なぜなら、ここに行けば極上ランチが食べられるから。

では、何をもって
極上ランチが食べられるお店というか。
それは…
ロケーション。
お店の雰囲気。
働く方の雰囲気。
プライス。
そしてもちろん、お料理の味。

「たかはし料理店。」はすべてにおいて抜かりない。

旅人にとって
市役所とか区役所といった
その土地にある公共の場所はなぜか魅力的にうつる。
私だけなのかな…

誰にも聞いたことないけどこれは持論。

例えばロビーにある石像や地図のパネル
喫茶店や食堂、というものにその土地の地域性を感じられるからだろうか。
どこか知らない土地に行くと
結構、意識して探してしまう場所が役所だったりする。

北海道庁にあるというロケーション。
さらに13階という高層階で
広い窓から見える札幌の街並みに
心躍るのは旅人だけではないはず。

手書き風のイラストが壁に描かれ、
穏やかな雰囲気を作り出している。
スペースも広く、大人数でもゆったりとご飯が味わえるのだろう。

そして、ちょっとほっこりするのが
働くお母さん(ぽい雰囲気)方の笑顔。

このお店はいいお店なんだな、という要素がこの時点で満載。

問題のメニューは
お昼のランチ時は女性用プレートが550円で
そのお皿に自分で好きなだけおかずをもりつけるという
ビュッフェ形式。

それだけでもテンションあがるのに
1品1品のクオリティが半端ない。
どれを食べても当たりなのだ。
北海道のお野菜はどこで食べてもやっぱり美味しいのだけど
どれも素材の味を生かしたお料理で
私はここの大根の煮付けとコロッケの味に敬礼したいと思った。

ちょっと誉めすぎ感が漂うけど
本当のことだから仕方ない。

ここは様々な理由で
何度でも通いたい場所。